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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(あ)5302号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人高井千尋の上告趣意(後記)第一点について。

所論は、原審で主張判断が無かった事項であり、またその実質は、事実誤認と法令違反の主張であって、適法な上告理由に当らない。(そして原判決は、被告人が広幡荘蔵と意思を連絡した上判示のような饗応をしたという事実を認定しているのであるが、右広幡荘蔵が所論のように被告人と共謀にかかる事件につき富山地方裁判所魚津支部に起訴されその審理を受けているとしても、その事件と被告人の本件とは、すでに被告人を異にするから、いわゆる関連事件ではあるが、刑訴一〇条一項にいう同一事件には当らない。従って泊簡易裁判所が第一審として被告人について本件を審理し判決をしたからといって、その手続になんら法令違反はなく、論旨そのものも理由がない。)

同第二点について。

所論は、第一点の主張を前提とし、当審において原判決の憲法三七条一項違反を主張するのであるが、同じく原審で主張も判断も経ていない事項であり、適法な上告理由に当らない。(そして第一点について説示したように、原判決の手続になんら法令違反はないのであるから、所論は、その前提においてすでに理由がなく、且つまた、たとい同種の事件についても、被告人が異なり、裁判所が異なれば、犯情その他によって相異なる判決を生ずることのあるのは現行制度上当然である趣旨は当裁判所のすでに判示するところである。(昭和二七年(あ)第五六四号同二八年一一月一〇日第三小法廷判決、集七巻一一号二〇六七頁参照)。)

同第三点について。

所論は、原判決が証拠として採用した供述調書をもって、長期拘禁後の自白なりとし、憲法三八条二項に違反すると主張するのであるが、かかる主張は原審で主張なく従ってその判断を経ていない事項であるから、適法な上告理由に当らない。

同第四点について。

所論は、要するに事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお原判決の是認する第一審判決挙示の証拠を検討してみると判示事実を認められるのであって、原判決の説明は正当である)。

その他記録を調べても同四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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